「金銭の支払いを請求できる権利」が基本になります。
※遺留分について 詳しくは遺留分減殺請求(交渉・調停・裁判)をご覧ください。
これまでは、遺留分を侵害された人が遺留分減殺請求権を行使すると、遺産は当然に共有状態になるというルールでした。
例えば、1000万円の不動産がAさんに遺贈されましたが、これがBさんの遺留分を侵害しており、その侵害額が100万円(不動産の持分10分の1に相当する額)だとします。この場合に、BさんがAさんに対して遺留分減殺請求をすると、不動産はAさん(持分10分の9)とBさん(持分10分の1)の共有になる、ということになっていました。
しかし、上記の例のように遺産が共有になると、次のような不都合が生じます。
- 遺産を処分したくても、共有者全員の同意がないと処分できないので不便だ。
- 事業用の財産を後継者に承継させたいのに、他の人との共有になってしまうと事業の承継がうまくいかない。
改正法では、遺留分の権利は、受遺者や受贈者に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できるというシンプルなものになりました(民法1046条1項)。これまでのように、遺産が当然に共有状態になることはなくなったので、遺産の処分や事業の承継に支障がでることが少なくなると考えられます。
また、条文上の名称も、「(遺留分)減殺の請求」(旧1031条など)から、「遺留分侵害額の請求」(新1046条など)に変わりました。
支払期限の猶予を求めることもできます。
遺留分の問題を、お金を払って解決できるのはシンプルでよいとも思われますが、支払いにあてる資金がない場合は困ってしまいます。
そこで、遺留分の請求を受けた受遺者または受贈者は、裁判所に対して、全部または一部の支払いについて、支払期限の猶予を求めることができるようになりました(民法1047条5項)。
施行日に注意が必要です。
遺留分に関する改正は、2019年7月1日に施行されました。
2019年7月1日以降に開始した相続、つまり、7月1日以降に亡くなった人の相続に関しては、新しいルールが適用されますが、7月1日より前に亡くなった人の相続については、改正前のルールが適用されます。
今回の相続法の改正は多くの分野にわたっており、それぞれ施行日が異なりますので、注意が必要です。
遺留分の請求は弁護士にご相談ください。
遺留分を請求したい場合は、まず遺留分の金額を計算しなければなりません。
また、遺留分を請求された場合も、相手の請求が正当なものか検討するために、金額の計算が必要になります。
しかし、遺留分の計算や、その前提としての相続財産の調査には、なかなか難しい面もあります。
遺留分を請求したい方、または相手から遺留分を請求された方は、是非弁護士にご相談ください。
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