相続債務があり、限定承認を申し立てたケース

相続トラブル事案の概要

ある年の11月にAさんが亡くなりました。Aさんの相続人は、妻の甲さんと長女の乙さんの二人です。

Aさんは、Aさんより先に亡くなった兄Bさんの相続人でした。Aさんの死後、Bさんが自動車ローンを残して亡くなっていたことがわかりました。

Aさんは、Bさんの相続に関して相続放棄をしないまま亡くなったので、Bさんの借金は、相続人であるAさんが相続します。さらにその後、Aさんが亡くなったため、Aさんが相続したBさんの借金を、Aさんの相続人である甲さんと乙さんが相続することになります。

相続関係図

 

 

 

 

 

 

AさんとBさんの兄弟に交流はなく、Bさんが生前何をしていたかは不明ですが、Bさんはあまり素行のよくない人だったという話もあり、自動車ローン以外の借金があったとしてもおかしくはありません。

甲さん親子は、Aさんの相続をどのように進めていくか、弁護士に相談することにしました。

 

相続トラブル解決結果

1.相続放棄か限定承認か?

甲さん親子は、最初は相続放棄をするつもりでした。しかし、Aさん自身には借金がなく、また、プラスの財産として預貯金などが数百万円あります。相続放棄をすると、Bさんが残した借金を払わなくてもすみますが、Aさんの財産を受け継ぐこともできません。

Bさんの残した借金が既に判明している自動車ローンだけであれば、相続財産はプラスではあるものの、上記のように生前のBさんとは交流がなかったこともあって借金の詳細は分からず、プラスなのかマイナスなのか判断しかねる状況でした。

そこで、甲さん親子は、限定承認(プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産についても責任を負うという前提で、亡くなった方の立場を承継する)を申立てることにしました。

限定承認については、「相続放棄・限定承認」をご覧ください。

 

2.限定承認のスケジュール

限定承認の手続きが終了するまでの期間や、具体的な手続きは、個々のケースごとに異なりますが、甲さん親子の場合は、ご依頼を受けてから手続きが終了するまで、約半年でした。

時期 手続きの内容 説明
11月 Aさんが死亡、相続が開始

当事務所の弁護士が甲さん親子から相談・依頼を受ける

☆申立ての準備として、次のような業務を行いました。

・相続財産の調査(通帳のチェック等)

・相続人の調査(戸籍の取得)

翌年1月 裁判所に限定承認の申立て
翌年2月 相続財産管理人に甲さんが選任される 当事務所の弁護士は、相続財産管理人の甲さんから依頼を受けて、以後の業務を行いました。
官報公告 申立後10日以内に、被相続人に対して債権を有する場合は申し出よという内容の広告を官報に掲載します。
債権者への通知 判明している債権者に対して、2か月以内に債権額を届け出よという内容の通知を出します。
☆官報公告や債権者の通知と並行して、相続財産である預貯金等の解約、換金作業を進めました。

また、Bさんの相続人について、具体的な相続分の調査を行いました。調査の結果、相続人のうち何人かは相続放棄をしていたことが判明しました。

翌年4月末 債権届出期間の満了 直接通知をした債権者からのみ届出があり、官報公告を見て新たに届出をしたと思われる債権者はありませんでした。
翌年5月 配当表の作成、債権者への配当 届出のあった債権者に対して、Aさんの相続財産を分配しました。本件は、債権者に100%配当できたため、特に問題はありませんでした。
手続き終了 最後に、残余財産(債権者への配当後に残った相続財産)を甲さん親子に引き渡して、手続き終了となりました。

また、届出がなかった被相続人の債権者から後日請求があった場合に備え、支払い義務の上限を示す資料として、相続財産の範囲と配当の内容を明確にした書類を甲さん親子にお渡ししました。

限定承認は弁護士に相談を

限定承認を申立てるケースはそれほど多くありません。平成29年度の司法統計によれば、同年度に家庭裁判所に限定承認を申立てて受理された件数は、全国で795件です。相続放棄が21万7287件であるのに比べると、いかに少ないかがわかります。

なぜ少ないかは、手続きが煩雑であることに加え、相続人全員がそろって申立てをする必要があること、また、甲さん親子のケースのように、そもそも限定承認という方針が適切かどうかの判断が難しい(結果的には単純承認でも問題がないことが多い)ことによると思われます。

また、限定承認や相続放棄をする場合は、相続開始から3か月以内という期間制限がありますご家族が亡くなった直後の慌ただしさの中では、3か月はあっという間に過ぎてしまいます。このような時間的制約の中で、相続について適切な方針を選択するのは簡単ではありません。

相続の進め方についてお困りの方は、なるべくお早めに弁護士にご相談ください。

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