相続全般に関する基礎知識
- 相続
- 人が亡くなったときに、その人の財産をほかの人が包括的に承継すること。亡くなって、相続「される」人を被相続人、亡くなった人を相続「する」人を「相続人」と呼ぶ。
- 遺産(相続財産)
- 亡くなった人が生前もっていた財産。不動産、現金、預貯金、株式などプラスの財産と、借金や未払費用などマイナスの財産がある。
- 法定相続
- 被相続人が遺言をせずに亡くなった場合に、その遺産が民法で決められている相続人(法定相続人)へ、民法で決められている具体的取り分(法定相続分)に従って承継されること。
- 法定相続人の範囲
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
- 第1順位
死亡した人の子
子が既に死亡しているときは、その子の直系卑属(子や孫)が相続人となります。子も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子の方を優先します。 - 第2順位(第1順位の人がいないとき)
死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。 - 第3順位(第1順位の人も第2順位の人もいないとき)
死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子が相続人となります。 - 法定相続分
※子、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
- 共同相続人
- 相続人が複数いる場合の全ての相続人
- 交渉
- 裁判所を通さずに、当事者同士が直接話合いをして、解決を試みること。
- 調停・審判・訴訟
- 交渉が裁判所を通さない解決方法であるのに対して、これらは裁判所を通して解決を図る手続。調停は、当事者の話合いをベースに解決を目指す手続であるが、審判・訴訟は、裁判所が当事者の提出した資料等に基づいて一方的に判断を示す手続。どの手続きが利用されるかは、事件の内容・性質等によって異なる。
- 家庭裁判所
- 家庭に関する事件(相続、婚姻、離婚、親子関係などに関する事件)などを専門に扱う裁判所。
相続手続でよく使用する書類に関する基礎知識
- 戸籍
- 夫婦と未婚の子どもを単位として、その人たちの身分事項(出生、婚姻、養子縁組、離婚、死亡、認知など)を記録する文書。被相続人と相続人の関係性を証明する書類として、登記、相続放棄、金融機関・裁判所の手続などで必要になる。本籍地の市区町村役場で発行してもらえる。
- 謄本(とうほん)と抄本(しょうほん)
- 謄本は、原本の内容を同一の文字符号によりそのまま完全に記載した文書で、抄本は原本の一部を抜粋して記載した文書。例えば、戸籍謄本は、戸籍に載っている全ての者について記載されているが、戸籍抄本は、一部の者についてのみ記載されている。
- 戸籍謄本・戸籍全部事項証明
- 現在、戸籍に記載されている人全員の身分事項を証明するもの。コンピュータ化された戸籍については、戸籍全部事項証明というが、一般的には、戸籍謄本とも呼ばれる。
- 除籍謄本・除籍全部事項証明
- 婚姻や離婚、死亡、転籍(本籍を他に移すこと)などによって、その戸籍にいる人全員が抜けた状態の戸籍を役所に発行してもらった書面。コンピュータ化された戸籍については、除籍全部事項証明というが、一般的には、除籍謄本とも呼ばれる。
- 改製原戸籍(かいせいげんこせき)
- 戸籍法の改正により戸籍の様式が新しい様式に作り替えられた場合に、この作り替えられる前の戸籍を役所に発行してもらった書面。「かいせいはらこせき」「はらこせき」とも呼ばれる。
- 住民票
- 世帯ごとに、個人の氏名や出生年月日、性別、世帯主との関係、住所などの事項を記録した文書。登記手続で必要になる。住民登録地の市区町村役場で発行してもらえる。転出したり死亡したりして住民登録がなくなっている場合は、かつて登録されていた事項について、住民票の除票(除住民票とも呼ばれる)を発行してもらえる。
- 戸籍の附票
- その戸籍が作られた時点からの、その人の住所の移動を記録したもので、本籍地で戸籍とともに管理されている。
- 名寄帳(なよせちょう)
- 課税・非課税を問わず、その市区町村内に所在する土地・家屋を納税義務者ごとにまとめた一覧表。相続財産の調査のため取り寄せることが多い。不動産の所在地の市町村役場または都税事務所で発行してもらえる。
- 固定資産評価証明書
- 1月1日を基準とした、固定資産の価格等についての証明。相続登記に必要になる。不動産の所在地の市町村役場または都税事務所で発行してもらえる。
- 印鑑登録証明書
- 個人が財産上の取引などをするときに、使用した印鑑が市区町村に登録された印鑑(実印)であることを証明する書類。
遺産分割(交渉・調停・裁判)に関する基礎知識
- 遺産分割
- 相続財産をどのように分けるかを、相続人全員で話し合って決めること。
- 遺産分割協議書
- 遺産分割協議の内容を記載した書面。共同相続人全員が署名し、押印(通常は実印)する。
遺留分減殺請求(交渉・調停・裁判)に関する基礎知識
- 遺留分
- 民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる取り分。
- 遺留分減殺請求
- 遺留分を侵害された人が、贈与又は遺贈を受けた人に対し、遺留分を侵害された限度で遺産の返還を請求すること。
- 内容証明郵便
- 「いつ、いかなる内容の文書を、誰から、誰あてに差し出したか」ということを、郵便局(日本郵便株式会社)が証明してくれる制度。通知の証拠を残したい場合に利用される。
相続放棄・限定承認に関する基礎知識
- 単純承認
- 被相続人の権利(プラスの財産)だけでなく、義務(マイナスの財産)も全部受け継ぐこと。
- 限定承認
- 被相続人のプラスの財産の範囲でのみ、マイナスの財産も受け継ぐこと。家庭裁判所での手続が必要。
- 相続放棄
- プラスの財産であろうとマイナスの財産であろうと、被相続人の遺産を一切引き継がないこと。限定承認と同じく、家庭裁判所での手続が必要。
- 熟慮期間
- 単純承認、限定承認、相続放棄をするかどうかを決めるための期間。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(請求によって、家庭裁判所で伸ばすことができる。)。期間内に、限定承認又は相続放棄をしなかった場合、単純承認をしたものとみなされる。
- 相続放棄申述受理証明書
- 相続放棄が家庭裁判所に受理されたことが証明されている書類のこと。家庭裁判所で発行してもらえる。被相続人の債権者から請求が来た場合に、「相続放棄をしているので支払の義務がない」ことを証明するために使うことが多い。
相続手続サポートに関する基礎知識
- 不動産の名義変更
- 法務局に申請書類を提出し、不動産(土地・建物)の所有者の名義を変更すること。相続の場合は、被相続人(亡くなった方)から相続人(財産を承継する方)へと所有者の名義を変更することになる。
- 法務局
- 不動産(土地・建物)や会社の登記業務などを扱う役所。
遺言に関する基礎知識
- 遺言書
- 死後の法律関係を定めるための被相続人の意思の表示を書面にしたもの。いくつかの方式があるが、代表的なものとしては、自筆証書遺言と公正証書遺言がある。
- 自筆証書遺言
- 遺言者本人がその全文、日付及び氏名を自書し、遺言者本人の印鑑を押印するという遺言の方式。遺言の方式の中で、最も簡単な方法。
- 公正証書遺言
- 遺言者自身が、公証役場にいる公証人という人の前で遺言の内容を話し、公証人がその内容を書面に記載するという遺言の方式。遺言の方式の中で、最も厳格な方法。
- 遺言書の検認
- 遺言書の保管者や発見者が家庭裁判所に遺言書を提出して、相続人や受遺者の立会いのもとで、遺言書を開封し、遺言書の内容を確認すること。登記手続や金融機関の手続を進めるためには、自筆証書遺言の検認を受けなければならない。
- 遺贈
- 遺言により、人に遺言者の財産を無償で譲ること。遺贈によって財産をもらう人を「受遺者」という。
- 遺言の撤回
- 既に書いた遺言の全部または一部を撤回すること。遺言者は、自分が書いた遺言書を自由に撤回することができる。
- 遺言執行者
- 遺言の内容を実現するために必要な行為や手続をする人のこと。
その他のサービス-成年後見に関する基礎知識
- 後見・保佐・補助
- 判断能力がないまたは不十分な本人のために、家庭裁判所が選んだ人が、財産管理や契約の締結など高い判断能力が要求される行為をサポートし、本人が不利益を受けないようにする制度。本人の判断能力の程度によって、後見・保佐・補助の3つのパターンが用意されている。
- 成年後見人・成年被後見人
- 判断能力がない人のサポートを行う人が「成年後見人」。サポートしてもらう人は、「成年被後見人」。
- 後見監督人
- 後見人の仕事を監督する人。
- 任意後見契約
- 自分の判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめサポートを行ってもらう契約を結んでおくこと。