相続トラブル事案の概要
Aさんは都内に住む70代の女性です。
ある日、関西地方の市役所から、納税通知書が届きました。Aさんの兄にあたるBさんが亡くなり、Bさんが滞納していた市民税の支払い義務をAさんが相続したため、Aさんにその支払いを請求するという内容のものでした。
Aさんは結婚して家を出た後、Bさんとは疎遠になっており、Bさんが亡くなったことも市役所からの納税通知で初めて知りました。
Aさんは生活に余裕がないので、Bさんの税金を支払うことはできません。困ったAさんは、弁護士に相談することにしました。
相続トラブル解決結果
相続の対象となるのはプラスの財産だけではありません。税金や借金の支払い義務のようなマイナスの財産も相続の対象となります。ただし、相続放棄をすれば、支払い義務を免れることができます。
相続放棄の手続き詳細はこちらをご覧ください。
相続放棄は、相続人が「自己のために相続があったことを知ったとき」から3ヶ月以内に行わなければなりません。もし3ヶ月を過ぎるようであれば、家庭裁判所に期限の伸長の申立てをする必要があります。
Aさんが「自己のために相続があったことを知ったとき」は、市役所からの納税通知書を見てBさんの死亡を知った日です。
通常は3ヶ月あれば十分に相続放棄の準備ができますが、Bさんと疎遠だったAさんは、Bさんの本籍地や住所など、書類の取り寄せに必要となる情報を知りませんでした。このような場合、まずAさんの現在の戸籍謄本を取り寄せ、従前戸籍(Aさんの親の戸籍)を調べて、そこからBさんの戸籍をたどらなければなりません。また、遠方の役所から郵送で書類を取寄せる場合は、役所での処理期間に加えて郵便の往復期間もかかるので、必要な書類が全てそろうには、かなりの時間がかかる可能性がありました。
結果的に、相続放棄の期限まであと2週間の時点で準備を整えることができましたが、時間がかかりそうな場合は常に期限を意識しておく必要があります。
最後に、Aさんのケースのように亡くなった方の債務の支払いを請求されていた場合は、相続放棄をしたことの証明として、債権者に「相続放棄申述受理証明書」を送付します。この証明書は、相続放棄が完了した後に、手数料(収入印紙150円)を添えて家庭裁判所に申請すれば交付してもらうことができます。
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